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自作小説導入部分

以下、自作小説導入部です。
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「あ、なげっと?!」
リードを引いて愛犬の「なげっと」の散歩をしていた壬生凛音は、
突然リードを引っ張って駆け出す愛犬の姿に戸惑い、引っ張られる。
利口で、滅多なことでは飼い主を引っ張ったりしないなげっとの行動を凛音は完全に予測できず、
かろうじて踏みとどまれなければ地面に倒れていただろう。
その位なげっとが彼女を引っ張る力は強かった。
「あ、こら、ちょ、待ちなさい!」
踏みとどまった・・・というより、
足を出して転倒を防いだっと言った方が正しいような格好の凛音は、
そのまま走り始めたなげっとにつられるように、なんとか姿勢を整えて走り始める。
元々居た街の外れから距離にして200m、
凛音が獣医兼管理人を務める『壬生動物病院』の入り口、
Closedの札を掛けてある閉じられた門の外に女の子が座っていた。
歳の頃は凛音よりずいぶん若い、
少女というのすら幼いくらいの薄汚れて靴も履いていない女の子、
そんな子が道行く人に奇異の視線で見られながら、
動物病院の前に『胸の前で腕をしっかり抱いて』座っていた。
「・・・まさか」
なげっとは賢い、そして勘が良い。
凛音はなげっとに引っ張られていたリードを弛ませる位の勢いで走り出し、
女の子の前に屈みこむ。
「やっぱり・・・」
女の子の腕の中には、生まれて間もないであろう、弱った小鳥が抱かれている。
小鳥とは思わなかった凛音だが、少女が傷ついた動物を守っていることは想像に難くなかった。
「・・・おいしゃさま・・・ですか・・・?」
顔を上げた女の子の顔を見て、
凛音は息を呑む。
生気は無く、まるで死神に魅入られているような女の子の顔。
その光も見えない瞳の中にある「小鳥を救いたい」そんな思いに、
凛音は目を見開いて驚いていた。
それなりに裕福で、自分のしたい事をさせて貰っていた凛音にしてみれば、
自分より幼く儚げな女の子の瞳が曇っていることも驚愕することの一つであったが、
それ以上に、自分の事以上に小鳥を身を案じる女の子の気持ちが、
その気持ちだけが切実に伝わってくる女の子の瞳が、
凛音には『助けてあげたい』と思わせるのに十分な理由だった。
「立てる?あ、小鳥はお姉さんに預からせてね」
そう言って両手を差し出す凛音に、
女の子は涙を流して腕の中の小鳥を預けた。
「なげっと、その子を家に連れて行っておいて頂戴ね。
 おばあちゃんを連れてきてくれれば、きっとわかってくれるはずだから」
凛音はなげっとの頭を一撫でしてそう告げ、
自分はそのまま動物病院へと歩いて入って行った。

「ふぅ・・・」
凛音は額に浮かんだ汗を手の届く位置に置いておいた清潔なタオルで拭って一息をついた。
「親鳥も気づいてないのかしら・・・」
小鳥は一命を取りとめ、今は浅いながらもちゃんと呼吸をして眠っている。
凛音が小鳥の翼などに気をつけて雛鳥用のケージに小鳥を寝かせようと部屋を出た時、
白いワンピースに藍色の髪留めのリボンで髪を束ねた女の子と祖母が、
手術室の前の長椅子に座っているのに気づいた。
「おばあちゃん、その子のこと、ありがとね」
そう言って、凛音は丁寧に、小鳥を入れたバスケットに気をつけながら会釈する。
祖母は何も言わずに頷いて微笑んでいる。
凛音の声に、彼女が現れたことに気付いて心配そうに自分を見上げた女の子に、
「大丈夫、弱ってはいるけれど、この子は無事よ」
そう小鳥を入れた小さなバスケットの蓋を開けて見せ、
女の子の頭を撫でた。
「・・・あの、わたし、おかね、ないの」
目をきつく瞑り、その次の罵声や体罰に備えた女の子に、
「おばあちゃん」
凛音は祖母へ目配せをして、
彼女が頷いたのを確認すると、
「いいのよ、貴女を叱ったりはしないわ」
そう言って微笑み、
女の子の頭に手を載せてもう一度撫でる。
その言葉に、女の子はまた、涙を流した。

その夜、凛音は自分の部屋で女の子の口から少しずつその状況を聞き出した。
自分は書類整理用の机から引いた椅子に腰を掛け、
女の子にはベッドを勧めた。
女の子は名前を聞いたとき首をかしげ、
「・・・いちはちごうよん」
そう口にした。
とある孤児院で暮らしていたが、
経営の不振から施設は閉鎖され、
その身のまま町の中に放り出されたという。
仲の良かった何人かの子供と共に町から町への移動を繰り返していたが、
飢えからの盗みを見咎められたり、栄養失調などで次々といなくなりこの町に流れ着いたそうだ。
道端に倒れ、その翼を踏み砕かれて動けない小鳥との関わりは定かでないが、
少なくとも自分の姿に重ね合わせて見た部分があったのかもしれない。
「そっ・・・か」
身寄りどころか、自分が誰なのかすらわからない・・・そんな女の子の姿は、
まさに凛音にとって『理解を超えた存在』といっても過言ではなく、
凛音には女の子にかけられる言葉が思いつかなかった。
それ故に、一言自分が理解したことを伝える返答しか、その口から発せられない。
「貴女も、自分が誰なのか、わからないのね」
その言葉は、ノックの後に数瞬の間を空けて扉を開けて入ってきた凛音の祖母が発した言葉だった。
「じゃあ、なげっとと同じなのね」
祖母はそう言って自分の横に従うなげっとの頭を撫でた。
なげっとはその手を気持ち良さそうに受け、
その身を少しだけ祖母に近づける。
祖母は近くにあった椅子に座り、
なげっとはその足元で身を伏せた。
「・・・おなじ?」
女の子がオウム返しに呟くと、
「この子も、怪我をして倒れていた所を私がこの病院に連れてきたのよ」
そう言って凛音がなげっとを手招きし、
歩み寄ったなげっとの喉を軽く掻いてやる。
「この子はね、手の回らなくなった勝手な人が外に放り出した捨て犬なの」
その言葉を話す凛音の表情が一瞬、さまざまな感情によって歪んだが、
それは一瞬のことで、すぐにやさしげな表情でなげっとの喉を掻いてやっている。
「わたし、このこ・・・?」
自分となげっとを交互に指差して、女の子は首をまたかしげた。
「あなた・・・行く場所がないのよね?」
凛音の言葉に少女がコクリと頷く。
「・・・おばあちゃん」
凛音がそう言って椅子に座る祖母に目を向けると、
「ええ・・・あなたが望むなら、そのようになさいな」
祖母はそう言って易しく微笑み頷いた。
凛音は祖母に頷き返し、
「―――あなた、ここに住んでみない?」
自分の心を言葉として口に出した。

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虹色しえる

Author:虹色しえる
色んなゲームを少し齧ったりがっつり遊んだり、
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